別 名 甘尾城
所在地 群馬県甘楽郡甘楽町天引
築城者 甘尾若狭守
築城年 戦国時代
廃城年
現 状 山林
遺 構 郭・石積・土塁・堀切
移築建造物
再建建造物
史跡指定
評 価
 天引城は戦国時代に築かれた山城であり、山内上杉氏に仕えた甘尾若狭守の居城であるが、土地の伝承では西上州の英雄譚として伝わる多胡羊太夫宗勝の居城とも伝えている。山から山へと飛び移る人なのでもしかするとそうなのかもしれない。
 永禄4年(1561)に武田信玄が西上州へ侵攻を開始すると、上州の国衆たちは草木が靡くが如く武田氏の傘下となった。甘尾氏は小幡氏の出身で箕輪城の長野業正を仰いでいたが、箕輪城が陥落した後に武田氏に降ったとされる。小幡氏は武田氏の家中でも赤備の着用を許され、その武勇によって譜代並みの扱いを受けたが、甘尾氏についてはその後の足取りはわからない。
天引城 北尾根 曲輪 北尾根 堀切
北尾根 堀切 二の郭 主郭
主郭 石積み 南尾根 堀切
南尾根 堀切 南尾根 堀切 東尾根 堀切
東尾根 堀切 東尾根 曲輪 天引城からの眺望
 正月の城館探訪の始動は上州の山城だった。雪が降らなければ必然的にこの時期は山城が中心となる。友人と秩父を越えて群馬県に入ると吉井町を抜けて甘楽町へ訪れた。本来の大手道はもはや用をなさないほど荒れているらしく、関越ハイランドGCの南に天引城登山口の標識があるが、この道も途中で踏み跡すら消えてしまう。今はどうなっているかはわからないが、このときは途中から直登して尾根へ出た。15分も登れば最初の郭へと着く。
 最初の曲輪から中心部までは距離があり、15分ほど歩くと横堀と土橋が残る虎口へと至るが、登り始めてから山頂までは40分以上を要したことになる。曲輪の削平は見事で主郭の向こう側には岩を削った豪快な堀切があり、東尾根へ下ると堀切と土塁が残っていた。
 吉井三山のひとつに数えられる標高448mの朝日岳が天引城であり、上信越自動車道からは一郷山城、八束山城、天引城が居並ぶ風景が見られる。訪れづらい場所にあるが、登って遺構を見る値打ちは十分にある山城だった。
上信電鉄「吉井」下車 吉井バス「牛伏車庫」行で「神戸」下車 徒歩20分
日本城郭大系/新人物往来社
2013/01/02