別　名 − 所在地 東京都西多摩郡檜原村本宿 築城者 平山氏 築城年 応永２０年（１４１３） 廃城年 天正１８年（１５９０） 現　状 山林 遺　構 郭・土塁・堀切 移築建造物 − 再建建造物 − 史跡指定 東京都指定史跡 評　価 　檜原城は室町時代に鎌倉公方足利持氏の命により、武州平一揆を構成した平山三河守正泰が築いたとされる。甲斐との国境に近い檜原城は応永２３年（１４１６）に起きた上杉禅秀の乱で、鎌倉公方に敵対した武田信満に対する抑えとなったが、敗れた武田氏の家臣は山深い檜原へ逃げ込んだ者が多かったという。 　戦国時代の檜原城主平山伊賀守氏重は北条氏に臣従し、室町時代と同様に武田氏に備えていた。甲斐と相模の国境付近は軍事的緩衝地帯でもあり、それほど堅固な城郭は築かれていないが、甲斐と武蔵の国境には峻険な山城が多く築かれている。檜原城で武田氏の動向に目を光らせた平山氏重は相当に神経を擦り減らしていたのではないかと思う。 　天正１０年（１５８２）に武田氏が滅んだ後も、甲斐を巡っては徳川家康との睨み合いがあり、その息をつく暇もないまま天正１８年（１５９０）の小田原の役を迎える。豊臣秀吉が差し向けた別動隊の前田利家らが八王子城を攻め落とすと、横地吉信は敗残兵を収容して檜原城へ逃げ込み豊臣軍を迎え撃ったが落城し、吉信と平山氏重は城外で自刃し平山季重以来の名門平山氏は滅んだ。 檜原城 払沢の滝 竪堀 二の郭　虎口 二の郭 二の郭 堀切 堀切 主郭 主郭 主郭 堀切 堀切 堀切 檜原城からの眺望 　東京都の最果てにある檜原村だが、武蔵五日市駅から出ているバスの本数は意外と多く、本宿役場までの所要時間もそれほどかからないことを知った。初めて檜原城を訪ねたのは１０月の終わりだったが、山深い集落だけにひんやりとしていた。あまりに気持ちが良かったので、檜原城を下ったあとはあきる野市へ移動して阿伎留城と網代城へも登った。 　山がちな多摩地方を拠点とした武州平一揆の城としては、檜原城の他にも戸倉城、網代城、阿伎留城などが挙げられるが、戦国時代末期まで改修が加えられた檜原城は他の城とは一線を画す遺構を残している。古めかしさは否めないが、戸倉城のような簡素な造りではなく三重の堀切など見るべき点が多い。 　吉祥寺から登山道があるが、麓から見上げると屏風が覆いかぶさるかのような威圧感を感じる。道は九十九折れで見た目ほどの傾斜ではなく、実際に登ってみるとそれほど大したこともなかった。北から南西に連なる尾根上に数珠玉のように曲輪が並ぶ。案内板のある曲輪が二の郭であるが、ここを主郭と捉える解釈もある。城内最大の曲輪でもあり小屋掛けもできる広さがあるが、やはり最高所の曲輪が主郭であろう。二の郭と主郭を断ち切る堀切はとても大きくて見応えを感じさせる。 　小さな社が祀られている主郭の背後へ降りると南尾根の三重堀切へと続く。それほど大きな堀切ではないが檜原城の見せ場でもある。麓まで続く長大な竪堀をどう見るかだが、伐採した木の搬出に伴うものというのが正解かもしれない。帰りはその竪堀を下り途中から登山道に合流して下山した。 　最初の訪問から１３年が過ぎた。このように１０数年前を振り返ることができるのは自分がまだ元気な証拠だが、この先の１０年後はさすがに山城へ登るほどの体力は残っていないかもしれない。２度目の訪問では払沢の滝に訪ねてから檜原城へと登った。滝を見るのは好きだが、払沢の滝はもしかすると小さい頃、祖父に連れられて来ているかもしれない。高さも水量も十分な見事な滝である。 　久しぶりの檜原城は前回と異なり秋の装いをまとっていた。黄色や赤色に色づき始めた木々が美しく、その隙間から見える檜原の集落が朝靄に霞んでいた。以前に南東の尾根を出城とする図面を見たことがあったので寄り道してみたが、狭隘すぎてとても兵の行き来は難しいのではないかと感じた。おそらく檜原城もこれが最後となるだろうが、十分にその魅力を体感して戸倉城を目指すことにした。 ＪＲ五日市線「武蔵五日市」下車　西東京バス「数馬」行で「本宿役場前」下車　徒歩３０分 日本城郭大系／新人物往来社・東京都の中世城館／戎光祥出版・関東の名城を歩く／吉川弘文館 2011/10/31・2024/11/12