別　名 − 所在地 山梨県南巨摩郡富士川町最勝寺 築城者 − 築城年 − 廃城年 − 現　状 山林 遺　構 郭・土塁・堀切 移築建造物 − 再建建造物 − 史跡指定 − 評　価 　最勝寺砦は富士川流域から小室を経て仙洞田氏の本拠地へ通じる道を見下ろす標高４２８メートルの山城である。甲斐国志に城山として収録されているが、その歴史については不明であり、里人が城山と呼んでいると記されているに過ぎない。仙洞田氏と最勝寺砦との関わりについても記録はなく、甲府や韮崎からの烽火を富士川伝いに伝達した烽火台のひとつであったかもしれないが、単なる烽火台と異なり複数の曲輪と堀切を備えた城砦としての機能を有している。東尾根には広い曲輪があるが、有事の際に民衆を迎え入れた区画とも思える。 最勝寺砦 登山道入口 三の郭 二の郭 二の郭　石積 二の郭　石積 堀切 堀切 腰曲輪 主郭南　腰曲輪 主郭 主郭 堀切 腰曲輪 最勝寺砦からの眺望 　中野城と雨鳴城へ登ったあとは遺構の残存状況が良さそうな最勝寺砦を目指すことにした。伝承もなく歴史はまったくの闇の中にある山城であるが、それを逆手に取れば烽火台を兼ねたいわゆる村の城というべき城なのかもしれない。 　位置的に言うと最勝寺の南西の山塊であり、東麓には殿原という地名が残っている。登山道入口がわかりづらいが、山梨県道４２０号高下鰍沢線を西へ進み、リニア新幹線建設予定地の向かい側に城山へ続く鉄製の階段がある。階段を上がるとすぐにロープに頼らなければならない狭隘な道となり、それを過ぎてからは砂礫質の滑りやすい斜面を再びロープを頼りに登っていく。 　東尾根の突端までは九十九折れの道が続き、ここでようやく傾斜が緩やかとなり、きちんと削平されていない平場が現れる。このあたりを城域ではなく耕作地ではないかと思われ、石積も土留めのために積まれた近代の遺物と思えた。再び急斜面となり木に掴まりながら登ると広々とした三の郭が現れる。ここからが最勝寺砦の明確な城域となり、石積も遺構と捉えて良いかもしれない。さらに高さを持った二の郭には石祠が祀られており、その奥に大きな堀切が残っている。 　主郭の周囲は意外と厳重な備えを持ち、稜線にいくつかの小さな段が形成され、南側に２つの腰曲輪を従えている。尾根を西へ進むと埋まりかけた堀切が備わっている。二重堀切になっているものの主郭と二の郭間の堀切と比較するとやや小さめである。西端にも堀切が存在するが、そちらについては見落としてしまった。 　登り始めの急斜面と砂礫層、そして降り積もった落ち葉に足を取られて苦労したが、最勝寺砦の遺構はその苦労に応えてくれた。良好な状態を保つ山城であり、用途はさておいて規模だけで考えれば最勝寺城と呼びたくなるほどだった。帰路は再び斜面を滑り降りるように下り、這いつくばって登った往路よりも神経をすり減らしたが、無事に鉄階段を下りて果肉たっぷりのオレンジジュースを飲み干したときの安堵感と達成感は、山城探訪を趣味とする人たちには共感してもらえると思う。 ＪＲ中央本線・身延線「甲府」下車　山梨交通バス「鰍沢営業所」行で「小室山入口」下車　徒歩３０分 甲斐の山城と館／戎光祥出版 2025/01/03