別　名 − 所在地 山梨県南アルプス市加賀美 築城者 加賀美遠光 築城年 平安時代末期 廃城年 − 現　状 法善寺 遺　構 土塁・水堀 移築建造物 − 再建建造物 − 史跡指定 南アルプス市指定史跡 評　価 　加賀美次郎遠光は源義清の四男とされるが、逸見清光の三男とする系図も存在する。清光の猶子という説もあり、加賀美氏の初代として後に信濃守護となる小笠原氏や武田二十四将に名を連ねる秋山氏の祖となった。甲斐国巨麻郡加賀美郷を本拠地とし、現在の法善寺がその居館跡とされる。 　治承４年（１１８０）に源頼朝と木曾義仲が平氏追討の挙兵をすると、甲斐源氏の武田信義もそれに呼応して富士川の戦いでは平氏の大軍を敗走させるという大手柄を挙げた。文治元年（１１８５）に壇ノ浦の戦いで平氏が滅びると、頼朝は戦功目覚ましかった甲斐源氏の勢力拡大に対して猜疑心を抱き、一条忠頼や安田義定といった武田氏一門の多くが誅殺されたり失脚される中、遠光は頼朝の信任が厚く信濃守に任じられた。遠光の長男秋山光朝は平重盛の娘を娶っていたことが災いし、謀反の汚名を着せられ自刃させられたが、次男長清は小笠原氏を興し、三男光行は南部氏を興した。加賀美氏は四男光経が跡継ぎとなったが、弘安８年（１２８５）の霜月騒動で加賀美氏は衰退した。 法善寺 水堀 水堀 館跡碑 法善寺　本堂 法善寺　東門 稲荷神社 法善寺　境内 法善寺　境内 　夕刻が近づいた頃に加賀美遠光の居館跡である法善寺を訪ねた。正月ではあったが境内に人影は少なく、凛として雰囲気は古刹らしい厳かな佇まいであり、中世豪族居館としての姿を色濃く残している。 　遠光の居館にはずっと以前から訪れたい気持ちがあったが、南アルプス市に限らず山梨県内は交通の便があまり良くない。ＪＲも中央本線以外は身延線にしても小海線にしても本数は少なく、またバスの路線網も充実していない。昇仙峡や恵林寺といった名所でも車でないとかなり不便さを感じるほどで、ましてや身延線の駅から遠く離れた富士川以西は、自分の中では不毛地帯となっていた。 　甲斐の城館探訪が何より好きなのは、遠くに甍を連ねる甲斐の山々を借景にできることである。加賀美氏館でもそれは同様で遠くに写る山々が雰囲気を盛り上げてくれた。法善寺の山門脇に隠れるようにして館跡の石碑が建ち、山門前に水堀が東西に残っている。庫裏の近くには土塁もあるらしいが、それは後になって知ったので少し悔やまれる。 　古刹を散策するのは楽しいもので、歩を進めるだけで心身が浄化されていくような気持ちになる。砂利を踏みしめる音、時々聞こえてくる鳥のさえずりさえも自分を癒してくれるようだった。慎ましい本堂にも好感を覚えたし。東門などはまるで往時を思い起こされるような風景だった。 ＪＲ中央本線・身延線「甲府」下車　山梨交通バス「小笠原下仲町」行で「小笠原」下車　徒歩３０分 甲斐の山城と館／戎光祥出版・加賀美遠光館跡案内板 2025/01/03