別　名 − 所在地 山梨県南アルプス市小笠原 築城者 小笠原長清 築城年 平安時代末期 廃城年 − 現　状 小笠原小学校 遺　構 − 移築建造物 − 再建建造物 − 史跡指定 南アルプス市指定史跡 評　価 　後に信濃守護となり、近世には大名として存続した小笠原氏は、加賀美遠光の次男小笠原次郎長清を祖とする。小笠原氏の発祥地としては北杜市明野町も知られているが、現在では南アルプス市が発祥地として有力となっているらしい。特筆すべき点として長清は弓と馬術の名人であり、これが弓馬術の小笠原流として伝えられた。 　治承４年（１１８０）に諸国の源氏が平氏追討の挙兵をしたが、当時の長清は京で平知盛に仕えていた。甲斐源氏は一族を挙げて平氏との戦いに参戦しており、長清は帰国を許されなかったが、何とか帰国の途につくと頼朝のもとを訪れ、その後は西国各地を転戦して戦功を挙げた。 　平氏が滅んだ後、頼朝は甲斐源氏の勢力に畏怖を抱き、一条忠頼や安田義定らが誅殺されたが、加賀美遠光と長清父子は頼朝から信頼を置かれ、粛清の嵐から逃れている。 　頼朝の死後も長清は鎌倉幕府の御家人として承久３年（１２２１）の承久の乱に一手の大将として出陣し、その軍功によって阿波国の守護に任じられた。仁治３年（１２４２）に信濃で死去したが、８１歳という長命で天寿を全うした。存命中に信濃伴野荘の地頭に任命されており、小笠原氏は室町時代に信濃国の守護となった。 　信濃守護を経て近世まで存続した小笠原氏の故郷を訪ねた。小笠原長清という人物は武勇に秀でた武将だったことは、彼の生い立ちを調べていてよくわかった。室町時代に確立した小笠原流も家祖である長清の所作が子孫たちに受け継がれたのだろうと思う。 　そんな長清の居館跡は小笠原小学校の敷地となっている。遺構はもちろん残っていないし、今では居館の範囲を推測することも難しいのが現状であるが、校庭の西側に立派な石碑が建てられている。案内板は見当たらないが、この石碑を見られただけでも十分だった。松本市の井川城や林城、そして埼玉県の本庄城など、小笠原氏の末裔が居城とした城は数多く訪ねているが、そのルーツとなった居館跡を訪れることができて嬉しく思う。 ＪＲ中央本線・身延線「甲府」下車　山梨交通バス「鰍沢営業所」行で「小笠原」下車　徒歩１０分 甲斐の山城と館／戎光祥出版 2025/01/03