別　名 − 所在地 山梨県北杜市明野町上神取 築城者 屋代勝永 築城年 慶長１９年（１６１４） 廃城年 寛永９年（１６３２） 現　状 農地 遺　構 土塁 移築建造物 − 再建建造物 − 史跡指定 北杜市指定史跡 評　価 　屋代越中守勝永は室賀満正の四男として生まれたが、天正４年（１５７６）に叔父の屋代正国の婿養子となり、家督を継承して武田勝頼に仕えた。勝永は幾度か改名をしているが、勝頼に一字を与えられて勝永と名乗ったと思われる 　天正１０年（１５８２）に武田氏が滅んだ後は織田信長から信濃へ派遣された森長可に仕えたが、本能寺の変で長可が信濃から撤退すると上杉景勝に仕えて荒砥城主となる。海津城代の山浦景国の与力という処遇であったが、景国はかつて離反した旧主である村上義清の子であり、そのことについて勝永は不満を持っていたと言われ、徳川氏に内通したものの上杉氏に荒砥城を追われて逃亡した。 　このような経緯で勝永は正式に家康の家臣となり、酒井忠次の下に配属された後、慶長１９年（１６１４）の大坂の陣で徳川軍の旗奉行を務め、戦後に巨摩郡上神取に居館を構え、甲府藩主徳川忠長の家老となり小諸城代を務めが、元和９年（１６２３）に没した。寛永９年（１６３２）に忠長が改易されると、子の忠正も連座して改易され知行没収となった。 屋代越中守勝永館 案内板 土塁 館跡の現況 土塁 屋代越中守勝永の墓 　信濃の国人領主の家柄に生まれ、数奇な人生をたどった屋代越中守勝永の館跡は訪ねてみたい場所のひとつだった。村上義清を離反して武田氏に仕えた後は目まぐるしい有為転変を味わった武将だが、離反した村上氏の後継者とも言える山浦景国の配下となるのは皮肉なものだし、このような人事をした上杉景勝の心中はどうだったのかと深く考えさせられる。 　以前までこの館跡は屋代氏が武田氏に仕えた時代のものと思っていたが、大坂の陣も終わり天下泰平が訪れた時代の遺構である。それでもまだ世の中には戦国の気風が色濃く残っていたであろうから、高く築かれた土塁には戦闘意識が感じられる。遺構はこの南北に伸びる土塁のみであるが、案内板も設置されており十分な見応えが感じられた。どうしても逆光になってしまい、良い角度での撮影はできなかったが、それは自分の目に焼きつければ良い。近くの民家の庭先には勝永の墓もあるので、せっかく訪れるからには併せて見学したい史跡である。 ＪＲ中央本線「韮崎」下車　山梨交通バス「増冨温泉郷」行で「下小倉」下車　徒歩２５分 甲斐の山城と館／戎光祥出版・屋代氏居館跡案内板 2025/12/18