別　名 − 所在地 山梨県北杜市須玉町小倉 築城者 武田信光 築城年 鎌倉時代 廃城年 − 現　状 工場・農地 遺　構 − 移築建造物 − 再建建造物 − 史跡指定 − 評　価 　中尾城は武田信義の五男で甲斐源氏５代目当主となった武田五郎信光の居城と伝えられる。信光は石和ノ五郎と名乗っており、その居館は石和に存在したが、源義清と逸見清光父子が拠ったと伝わる若神子城から程近い中尾城を居城とした可能性はあり、また武田氏の歴代当主は度重なる水害に悩まされ、その拠点を転々としていることからも中尾城にまつわる伝承はあながち否定もできない。 　戦国時代に至り中尾城は武田信虎と信玄に仕えた小畠虎盛の子である小幡昌盛に与えられたという。昌盛は信濃海津城を守り上杉謙信に備えていたが、信玄の不興を買い蟄居を命じられ、武田勝頼らの執り成しで赦免され、永禄１２年(１５６９)の三増峠の戦いに検使として出陣した。 　昌盛がいつまで中尾城に在城していたかは不明であるが、天正１０年（１５８２）の武田氏滅亡に際しては、病を得て出陣できず、勝頼が自刃する直前に病死したという。その後に起きた天正壬午の乱では北条氏が若神子城を拠点として布陣したが、このときに中尾城も取り立てられた可能性はあると思われる。 　何もないことは知ってはいたが、せっかく近くまで来たこともあり中尾城を訪ねた。以前は案内板が設置されていたが、それも人為的に破壊されて久しく、今では文字すらも剥落してしまい、何も記されていないまま放置されている。幸いなことに中尾城を染め抜かれた旗指物が武田菱とともに設置されており、八ヶ岳をバックに翻る様は絵になった。 　遺構はすでに圃場整備などによって失われており、中心と目される場所は工場が建設されてしまい、ほんのわずかな断片すらも残されていない状態だった。南北に伸びる台地を横切る細い道路が往時の堀だったとも考えられるが、圃場整備が行われると旧来の道は真っ直ぐに付け替えられてしまうので、やはり断定するのは難しい。遺構はまったく期待できない中尾城だったが、周辺の風景は美しく、頬を吹き抜ける冷たい風が心地よかった。 ＪＲ中央本線「韮崎」下車　山梨交通バス「増冨温泉郷」行で「中尾」下車　徒歩３分 甲斐の山城と館／戎光祥出版 2025/12/18