別　名 − 所在地 山梨県北杜市須玉町上津金 築城者 津金氏 築城年 戦国時代 廃城年 − 現　状 山林 遺　構 郭・堀切 移築建造物 − 再建建造物 − 史跡指定 北杜市指定史跡 評　価 　 　 　源太ヶ城は戦国時代に武田氏に仕え、津金衆を組織して甲信国境の守りを担った津金氏の詰め城と考えられている。築城年代は明らかではないが、津金氏が甲斐に移り住んだ室町時代から、武田氏の先方衆となった戦国時代前期にかけてのことと思われ、津金氏の拠点である古宮城の有事における要害として築かれたのだろう。あるいは源太ヶ城こそが津金城の居城であり、その麓に根古屋集落が形成されたという見方もできると思う。 　この城で戦いが行われたという記録はないが、武田氏が終焉を迎えた後も津金氏の領地における要害だったことに変わりはなく、天正壬午の乱とその直後も廃城になることはなかったと思われ、天正１８年（１５９０）に徳川家康が関東へ移封されたときに、それ以前に召し抱えられた武田旧臣たちの多くが関東へ移住していることから、この頃が廃城時期と考えて妥当と思う。 源太ヶ城 登山道入口 登山道 東尾根の堀切 切通し 主郭と腰曲輪 主郭 主郭　秋葉社と城址標柱 堀切 二の郭と腰曲輪 二の郭と腰曲輪 二の郭 二の郭　崩壊した烽火台 西尾根の平場 源太ヶ城からの眺望 　この日は富士川町の源氏ヶ岳城に登る計画を立てていたが、冬季期間の林道通行止めによって源氏山方面への道が閉ざされたため、急転直下で信濃へと行き先を変更した。清里ではわずかながら降雪があったが、それ以外は冬晴れの青空に恵まれた一日となった。 　最初に訪ねた海ノ口城では手がかじかむほどの寒さだったが、山梨県へ戻ったときには風もなく、それほど寒さを感じることはなかった。甲斐での行き先をどうしようかと考えたが、源氏ヶ岳城が駄目なら源太ヶ城へ登ろうということになり、国道１４１号線から南へ折れて清里湖を眺めつつ源太ヶ城へと向かった。 　ウッドペッカーキャンプ場が登山道への起点となるが、そこには源太ヶ城と染め抜かれた旗指物が風に揺れていた。以前はこういった目標物もなく現地で迷ったものだが、今は地元の活動も盛んなようでありがたい配慮と感じた。キャンプ場の手前に車を停めて誰もいないコテージを東へ抜けていくと、道はやがて林道へと繋がり西へ緩やかな傾斜を登ると自衛隊顕彰碑が建っている。ここからは東側へ林道をたどれば良い。 　この林道が舗装されていれば城址まではあっという間なのだろうが、ダートなので普通乗用車での乗り入れは危険である。登山にはこれ以上ないほどの快適な道であり、林道だけに道幅も広く危険な箇所はまったくない。傾斜も緩やかで大半がフラットに感じられるほどだった。何度目かの蛇行を終えると林道の切通しへと着いた。一見すると大堀切に見えるが近代の建築遺産である。 　切通しを通らず左側へ登ると主郭の腰曲輪が見えてくる。なだらかな山道でも距離は長いので案外とくたびれたが、城域に入ってしまえば疲れも忘れてしまう。主郭には山梨県の山城によく見られる秋葉社の祠があるが、秋葉社は火除けの神なので山城に祀られることが多い。傍らには朽ちかけた城址の標柱があるが、主郭そのものは意外と狭隘だった。 　西へ下ると浅いながらも堀切があり、再び登りとなって二の郭へと至る。以前にはここに烽火台が復元されていたが、今は倒壊し残骸だけが横たわっていた。二の郭は広々としており、相当数の兵員が駐屯できたと思われ、そこからさらに西へ下るといくつもの腰曲輪が見られる。西端に広々とした平場があるが、これは林道終点の駐車場となっているようで、本来の広さはわからないし城域ではなかったかもしれない。 　以上が源太ヶ城の探訪記録であるが、想像していたよりも良い印象を受ける山城だった。曲輪の削平は綺麗だし、浅くはなっているものの堀切も見られる。土塁がないのは辺境の山城ではよく見られるし、そもそも攻め込まれることはあまり想定していないと思う。十分な満足感に浸りつつ山頂で少し休んだが、立ち去りがたい気持ちも少なからず感じる山城だった。 ＪＲ中央本線「日野春」下車　北杜市バス「大和公民館」行で終点下車　徒歩１時間 甲斐の山城と館／戎光祥出版 2025/12/18