別　名 安住城・浮城
所在地 富山県富山市本丸
築城者 水越勝重
築城年 天文元年（１５３２）
廃城年 明治４年（１８７１）
現　状 富山城址公園
遺　構 郭・石垣・水堀
移築建造物 −
再建建造物 模擬天守・千歳御門
史跡指定 −
評　価
　
　
　富山城は天文元年（１５３２）に水越勝重が築いたが、天文１２年（１５４３）に越中の守護代神保長職が居城とした。長職は神通川を挟んで所領を接する椎名康胤と敵対していたが、永禄３年（１５６０）に椎名氏に加勢した上杉謙信の攻撃を受け、富山城を捨てて増山城へ逃れた後に降伏した。長職は密かに武田信玄と通じて何度か謙信に反抗したが、増山城を包囲されるに及んで主家である能登畠山氏の仲裁によって謙信に降った。
　永禄１１年（１５６８）に椎名康胤は武田氏と結び上杉氏に敵対し、長職は謙信と手を組んで椎名氏に味方した一向一揆と戦ったが、神保氏の家中は上杉派と反上杉派での対立が激化し、長職は反上杉派は一掃し上杉氏との関係を強化した。この結果、父と対立した嫡男の長住は出奔して織田信長のもとへ奔った。
　天正６年（１５７８）に謙信が急死すると、信長の支援を受けた長住が上杉の軍勢を破り富山城へと入ったが、上杉氏と結んだ重臣の小島職鎮の急襲を受け、長住は富山城内に幽閉された後に放逐されたとされる。天正９年（１５８１）には佐々成政が富山城主となり、長住ははその指揮下に組み入れられた。
　天正１０年（１５８２）の本能寺の変で信長が横死すると、上杉景勝と抗争していた成政は上杉軍の反撃によって防戦一方となり、畿内では中国大返しを果たした羽柴秀吉が明智光秀を討ち、その後の清洲会議で成政は越中の所領を安堵された。秀吉と仲が悪かった成政は柴田勝家と連携したが、天正１１年（１５８３）の賤ヶ岳の戦いでは秀吉と結んだ上杉景勝に備えるため参戦することができず、敗戦後に成政は剃髪して秀吉に詫びを入れて所領と富山城主の地位を安堵された。
　天正１３年（１５８５）の小牧・長久手の戦いで、成政は徳川家康と誼を通じて秀吉に反旗を翻したが、秀吉は１０万の軍勢で富山城を包囲し、織田信雄の仲介によって成政は降伏したが、所領の大部分は没収されて富山城も破却された。その前年の厳冬期に成政は飛騨山脈を越えて浜松城の家康を訪ねて秀吉と戦うことを進言したとされる、いわゆるさらさら越えの逸話を残しているが、真冬の飛騨山脈の往復で生き残った者は数少なかったという。
　成政が去った後の富山城は前田利家の所領となり、慶長５年（１６００）の関ヶ原の戦いで東軍に与した前田利長は富山城を再建し、弟の利常に家督を譲った後は富山城を隠居城としたが、慶長１４年（１６０９）の火災によって中心部が焼失したため利長は高岡城を築き、富山城には城代が置かれた。寛永１６年（１６３９）には前田利常の次男利次が１０万石を分与されて富山藩を立藩し富山城主となり、富山前田氏は１３代続いて明治維新を迎えた。
富山城 本丸　水堀 本丸　石垣と佐藤記念美術館
佐藤記念美術館 千歳御門 本丸　石垣と水堀
本丸　模擬天守と石垣 本丸　模擬天守と石垣 本丸　模擬天守
本丸　石垣 本丸　鉄御門 本丸　鉄御門
本丸　鉄御門の鏡石 本丸　鉄御門の石垣 西ノ丸
　富山城は北陸の名城のひとつに数えて良い城であると思う。城域のほとんどは市街地となり、石垣と水堀以外にはほとんど遺構を残していないが、昭和２９年（１９５４）に建設された模擬天守は程よい調和を見せており、今では富山城のシンボルとなっている。その戦歴は輝かしいものがあり、猛将佐々成政の反骨心を投影するかのような歴史を誇る。
　本丸に建つ佐藤記念美術館は北陸の城らしい海鼠壁をあしらった遊び心が感じられ、復元された千歳御門も重厚感を添えている。昔の写真で見る模擬天守は煤けて黒ずんでいたが、今はすっかり綺麗になり青々とした瓦と天守最上階の朱塗りの欄干が良いアクセントとなっていた。
　本丸北側の水堀は工事中で味気ないものがあったが、今回の旅行で訪ねた城のうち福井城と金沢城は工事施工中であり、丸岡城も近々に天守の修理が予定されていた。富山城も同様で水を抜かれた堀底に重機が入っていたが、木造天守の修理を行う丸岡城と震災で被災した金沢城の石垣の修復は仕方がないとして、他の工事は本当に必要なのかと疑問を感じた。ここ５年ほどで訪ねた城の中で工事中だったり、工事予定でシートが被せられていた城は数多く、昔からの日本という国の体質を見ているかのようで辟易してしまう。
　愚痴ばかり言っても仕方がないので本題に戻すが、旅の最後を飾ってくれた富山城では満足感を得ることができた。全体的に曇りがちな天気だったが、富山城では時々青空が顔を覗かせており、綺麗に撮影することができたと思う。また来られるかはわからないが、北陸路の旅はこれまでとは一味違った様々な経験をすることできて大成功だった。
ＪＲ北陸新幹線・あいの風とやま鉄道・富山地方鉄道「富山」下車　徒歩１５分
日本城郭大系／新人物往来社・城郭と城下町／小学館
2025/11/28