別　名 芦城・浮城 所在地 石川県小松市丸内町本丸 築城者 若林長門守 築城年 天正４年（１５７６） 廃城年 明治５年（１８７２） 現　状 県立小松高校・芦城公園 遺　構 郭・石垣・土塁・水堀 移築建造物 門 再建建造物 − 史跡指定 小松市指定史跡 評　価 　 　 　小松城は永禄年間（１５５８〜７０）に一向一揆が拠った砦を前身とし、天正４年（１５７６）に本願寺門徒の若林長門守が築いたという。天正７年（１５７９）に織田信長の重臣柴田勝家の攻撃によって落城し、勝家の与力徳山則秀が小松城に入ったと考えられる。 　天正１１年（１５８３）の賤ヶ岳の戦いで勝家が羽柴秀吉に敗れ、北庄城主となった丹羽長秀の家臣村上頼勝が小松城主となった。長秀没後に丹羽氏は除封され頼勝は秀吉の直臣となるが、慶長３年（１５９８）に頼勝は越後本庄へ移封され、長秀の嫡男丹羽長重が１２万石で小松城主となった。築城の名手として知られた長も小松城の在城期間は短く、大掛かりな改修はできなかったと思われる。 　慶長５年（１６００）に丹羽長重は東軍に属した前田利長と交戦したため改易され、戦後は前田氏の所領となり前田長種が城代を務めたが、元和元年（１６１５）に発布された一国一城令で廃城となった。寛永１６年（１６３９）に前田利常が小松城を隠居城として再築し、このときに石垣による天守台が築かれ、曲輪が増築されるなどの大改修がされている。利常没後は加賀藩による城番支配が行われ明治維新を迎えた。 小松の街並み 正覚寺　移築北門 稚松小学校　移築常盤門 来生寺　移築鰻橋御門 枇杷島跡　葭島神社 三ノ丸　芦城公園 三ノ丸　前田利常像 葭島跡　丸の内町公民館 中土居　水堀跡 本丸 本丸　石碑と土塁 本丸　土塁 本丸　土塁と石垣 本丸　土塁と石垣 本丸　天守台石垣 本丸　天守台石垣 本丸　天守台石垣 本丸　天守台石垣 　一泊二日の行程で北陸旅行をしたが、二日目の朝はホテルで朝食を取る時間が惜しくなり、夜明け前にチェックアウトを済ませて始発の列車で小松へと移動した。北陸の日の出は東京より１時間近く遅いので、小松駅に到着したときも真っ暗だった。旅立った福井駅の周辺には恐竜のモニュメントが多数あったが、小松駅は恐竜ならぬゴジラの異名を取った松井秀喜の等身大パネルが出迎えてくれた。 　漆黒の闇に包まれた小松駅を後にして小松城を目指したが、途中の正覚寺にある小松城の北門を見た。この時もまだ暗かったが、鰻橋御門を見るために立ち寄った街外れの来生寺に着いたときには白々と夜が明けていた。小松城の格式を示すような見事な長屋門である。城門には様々な形式があるが、薬医門や高麗門より長屋門が好きな自分にとって嬉しい遺構だった。 　その鰻橋御門があった場所にある石碑を見てから本丸へと向かった、県立小松高校の北から曲がり角を折れると土塁が続き、本丸の石垣が現れたが、その奥に唐突に天守台の石垣が出現したのを見て驚いた。写真で見た天守台は大きさがよくわからなかったが、間近で見る石垣は呆れるほど巨大なもので、江戸城の天守台と遜色ないほどの迫力があった。どれほど立派な天守があったのかと夢が膨らむが、復元図に描かれた三階櫓は意外と質素なものである。百万石の前田氏でも外様大名としての遠慮はあったろうし、ましてや小松城は家督を譲った隠居の城であるから壮麗な天守は築けなかった事情があるのだろう。 　湖に浮かぶような浮き城の面影はもう見ることはできないが、本丸西側の水堀跡や三ノ丸跡の芦城公園の庭園などを見ていると、ほんの少しではあるが小松城の往時を思い浮かべることはできる。期待していた以上の遺構との出会いと古城らしさを感じることができた城だった。 ＪＲ北陸新幹線・ＩＲいしかわ鉄道「小松」下車　徒歩３０分 日本城郭大系／新人物往来社・城郭と城下町／小学館 2025/11/28