別　名 松尾城・両頭城 所在地 静岡県掛川市西大渕 築城者 大須賀康高 築城年 天正６年（１５７８） 廃城年 明治２年（１８６９） 現　状 横須賀城跡公園 遺　構 郭・石垣・土塁・水堀 移築建造物 門・番所 再建建造物 石垣 史跡指定 国指定史跡 評　価 　 　 　横須賀城は天正６年（１５７８）に徳川家康の家臣大須賀康高が、高天神城攻めの拠点として築いた城である。西に向かえば浜松城があり、小笠山の山脈を越えれば掛川城へと続き、眼前に広がる遠州灘の海路を抑えた屈強の血に築かれた城でもあった。 　武田氏が滅んだ後も、要衝の地であった横須賀城は存在し続け、天正１８年（１５９０）に豊臣秀吉が天下統一を果たした後は渡瀬繁詮３万５千石で横須賀城主となった。繁詮が豊臣秀次事件に連座して改易させられると、有馬則頼の次男で渡瀬氏の家老を務めていた有馬豊氏が所領を引継いだ。 　豊氏は慶長５年（１６００）の関ヶ原の戦いに参加した功で、加増されて丹波福知山城へと移り、再び大須賀忠政が６万石で横須賀城主へと返り咲いた。その後は家康の十男徳川頼宜の持ち城となり、松平氏、井上氏、本多氏が藩主を歴任したが、天和２年（１６８２）に西尾忠成が２万５千石で入封し明治維新まで西尾氏が藩主を務めた。西尾氏の治世下で宝永大地震が発生し、横須賀湊は土地の隆起により使用できなくなったため、歴代藩主は茶やサツマイモの生産を奨励し文化の発展に尽力した。 不開門跡 撰要寺　移築不開門 本源寺　移築搦手門 西櫓 二ノ丸 二ノ丸　土塁 西ノ丸 西ノ丸　石階段 西ノ丸 三ノ丸　堀跡 三ノ丸 北ノ丸 松尾山　建物跡 三日月池 本丸 本丸　虎口 本丸　石垣 本丸　天守台 　遠江の要衝として知られた横須賀城だが、高天神城までは訪れたことがあるものの、近くまでは行きながら現地へ立つことはできなかった。忸怩たる思いがあったが、ようやく訪ねることができ、それも冬晴れの快晴の日に初めて訪れることができたのは幸運だった。 　湿地帯に浮かぶ軍艦のような縄張りの城だが、堀は埋め立てられてしまい、洋上を航行する巨大戦艦のような姿は頭の中で思いを馳せるしかない。しかし過度な建物の復元もなく、特徴的な玉石垣の復元程度で抑えられているのはとても好印象だった。 　西端からひと通り歩いてみたが、二ノ丸は広大な平地となっている。西ノ丸から本丸は少し歩いただけで、一度、城域を離れて本源寺に移築された搦手門を見ることにした。途中の三ノ丸では堀跡の発掘調査中で担当者から説明を受けることができたのはありがたい。移築門はいかにも城門らしい風格があり、静かな境内はとても風情があった。 　再び横須賀城へと戻り、三日月池から本丸へと登ったが、途中には往時の遺構と思われる石垣もあり目を楽しませてくれた。本丸は幾重にも虎口が配置される複雑な構成である。天守台はやや変わった造りであり、ここに三重四層の天守があったと思うと、否が応でも気持ちが高鳴る。本丸から西ノ丸を経て北ノ丸へと歩いてみたが、ここも広々とした曲輪であり、横須賀城が高天神城攻めの駐屯地を兼ねていたことがよくわかる縄張りである。本丸の東側が崩落して痛々しいが早く往時の姿に戻ることを願いたい。松尾山にも建物跡を示す一画があるが、どのような建物があったのかは想像するしかない。 　念願の横須賀城の探訪はじっくりと時間を割くことができて楽しい散策となった。本源寺へ歩いていく途中にも城郭遺構ではないかと思えるような地形が見られるのが興味深かった。戦国時代と近世の遺構が重なり合う見事な城郭だと思う。 ＪＲ東海道本線「袋井」下車　秋葉バス「大東支所」行で「横須賀城跡」下車　徒歩５分 日本城郭大系／新人物往来社・静岡の山城ベスト５０を歩く／サンライズ出版・横須賀城跡案内板 2025/12/09